経済の風景 economic Landscape 2003 5 17
ある国の経済の風景を眺めますと、こんな具合です。
電車やバス料金の値上げ、水道料金の値上げ、家賃の値上げなど、値上げの風景。
この風景を見ると、デフレなど、どこの話だと感じるかもしれません。
しかし、これは公共料金だけの値上げであって、
商品価格や給与価格の値上げでないことに気づくべきです。
生活必需品はインフレで、非生活必需品はデフレになっていることに気づくべきです。
これで、税金の値上げが来ると、さらにインフレの気分になるかもしれませんが、
このインフレになっている部分は、すべて、削ることができない固定費でしょう。
家計のなかの固定費がインフレになり、給与がデフレになる。商品がデフレになる。
不況なのに、なぜか身近なものはインフレ。
これは、景気後退とインフレを、両方、体験できて、効率のいい経済学の勉強となります。
こういう経済現象は、経済学で言うところの、
スタグフレーションの一種とも言えるかもしれません。
インフレと景気後退が同時に存在することをスタグフレーションと言います。
昔のスタグフレーションは、インフレ下の景気後退だったかもしれませんが、
今度は、景気後退下のインフレかもしれません。
インフレは誰でも経験したでしょうが、あまりデフレは経験していないでしょう。
さらに新種のスタグフレーションともなると、未経験の分野かもしれません。
しかし、これで生きた経済学の勉強を実体験できます。
授業料を払わずに、未知の経済学が修得できます。
これは、迷路に入っているのです。
景気低迷で料金収入や税収が減った。だから料金アップや増税をやる。
しかし、これでは、短絡的です。
これで、公共機関や地方自治体は一時的には楽になりますが、
これが、景気後退にさらに拍車をかけますので、結局、料金収入や税収が、また減るのです。
そこで、料金アップや増税をまた、やる。
しかし、これは、元を正せば、バブルの時に、
公共機関や地方自治体が、無駄なことに投資を膨張させた結果なのです。
安易に料金アップや増税をやる前に、
公共機関や地方自治体、さらに政府は、バブル期になってしまった肥満体質を改善すべきなのです。
まず、ダイエットすべきです。料金アップや増税の前に、必要なのはダウンサイジングです。
ダウンサイジングとは行政改革のことです。
もう時代的にいらなくなった省庁や部局があるはずです。
不要となった省庁や部局を廃止してから、増税等をやればいいのです。
どうも、企業ばかりがダイエットやダウンサイジングをしていますが、
ダイエットやダウンサイジングをする必要があるのは、企業ではないのです。
このダイエットやダウンサイジングは、個人レベルや企業レベルの話となると、事情が違います。
個人レベルや企業レベルでダウンサイジングすると困ったことになるのです。
市場が収縮し始めます。
ダウンサイジングすべきは公共機関や地方自治体、そして政府であって、
個人レベルや企業レベルはそうではありません。
人間は、急にダウンサイジングをすることは、むずかしいでしょう。
去年まで、月収50万円の生活をしていた人が、
今年から月収30万円の生活をするとなると、
これは生活習慣の改善と同じくらい困難かもしれません。
しかも、downsizing は、shrinking を連想してしまい、
shrinking とは、要するにデフレのことですから、あまり気分のいいことではありません。
こういう時は、浪費癖のある人には、守りの経済も必要でしょうが、
人種や民族によっては、守りの経済をせよと言っても無理でしょうから、
何か、新しい価値の創造をして、市場を再び復活させたり、市場を膨張させたりする必要があるのです。
資本主義とは、常に新たな価値の創造を通して、発展してきたのです。
資本主義とは、インフレなのです。
過去にインフレで苦い経験があるからと言って、
過度にインフレに敏感になる必要はなかったのです。
少しぐらいインフレになったと言って、あわててインフレ叩きをすると、
デフレになります。これで、税収減となり、あわてて増税をします。
しかも、インフレは身近なものから、よみがえります。
それは、公共料金や税金から、インフレがよみがえります。
資本主義とは、インフレなのです。
インフレをやめた時にデフレが忍び寄ります。
資本主義とは自転車なのです。
自転車は漕ぐことをやめると、自転車は不安定になります。
価値が枯れてきて市場が収縮を始めたならば、
また新たな価値の創造をして、市場をふくらませる必要があるのです。